第33号 「3rd Life」
- お正月2014.09.01
- 『撲のいた時間』2014.09.01
- ~旦那後記~2014.09.01
- → 「 3rd Life」 各号の紹介ページへ戻る
お正月
ALSになってから5回目のお正月も、家族と一緒に自宅で迎えることができました。
とても幸せに思っています。
私のベッドテーブルにおせち料理をならべ、こうちゃんは私のベッドに座り、家族3人でのんびりとテレビを見ながらの年越しでした。
若い頃はバラエティー番組が見たいのに、大晦日に必ずNHKの「ゆく年くる年」にチャンネルを合わせる父に若干の不満を抱いていたのですが、
いつの頃からか「ゆく年くる年」のおごそかな雰囲気で聞く除夜の鐘に、1番気持ちが落ち着くようになっていました。
父が亡くなって10年以上になりますが、ようやく父の気持ちが理解できる年齢になってきたようです。
1月2日には大阪から母と姉が来てくれ、一緒に初詣に行って来ました。
神社には年末に主人とこうちゃんが車イスで参拝できるかを下見に行ってくれ、2日からヘルパーさんにサポートに入ってもらい、安心して参拝することができました。
すこぶる体調もよく、翌3日にはサンシャイン水族館でアシカショーを見て、呼吸器を付けてからは初となる外食にもチャレンジしました。
外出からの帰路、日が暮れてからの身に染みるような寒ささえ、喜びに変わるような楽しいお正月でした。
大阪の母と姉に、私の日常や外出のやり方、またこうちゃんの成長を実際に見てもらえたことがとても嬉しかったです。
母はただただ驚いて大阪に帰って行きました。
2014年も笑いと感謝で人生を楽しみたいと思います。
『撲のいた時間』
1月からALSを題材にしたドラマ「僕のいた時間」がスタートしました。
ALS発症初期の病状や、そのときの心理描写など、自分に重ねあわせながら、とても興味深く見ています。
特に根拠はないのですが、私は昔から「自分にはなにか特別な力がある」ように感じていました。
一般的に「3~5年で呼吸筋麻痺に至る」とされているALSですが、私の場合、発症から4年弱で呼吸器を使用することとなりました。
あまりにも平均的な進行具合に、当時は「凡人やん!」と自分にツッコミを入れていましたが、これまでの道のりにおいて本当に幸運だったと思える 人との出会いや、いまの恵まれた生活環境を考えると、やはり「なにか特別な力」があるように思います。
あらためて自分のALSの症状について考えてみると、最初にアレ?と違和感を感じたのは、こうちゃんをベビーカーに乗せ保育園に連れて行くときでした。
なんか重いし疲れやすいな、と感じていたのですが、道の舗装も悪く、逆にこうちゃんも日に日に大きくなってきている、と嬉しく思う程度でした。
それからどれぐらいたったのかは覚えていませんが、確実に「これはおかしい」と思ったのは、買い物をしようとお店に入ったとき、店員に「コレください」の言葉を発することができず、ジェスチャーで伝えなければならなかったときでした。
何がどうなっているのかわからず、不安に包まれたまま、少しずつ声を失っていきました。
ドラマの第3話を見て、症状が表面化する場所は人それぞれでも、感じる心は同じなんだと思いました。
神経内科の受診をすすめられた瞬間に倍増する不安、誤診であることを願ってみたり、数ヶ月前の人間ドックではなにも問題がなかったことにすがったり、
進行が進む前に大切な家族と旅行に行きたいと思うこと、実際に呼吸器を付けている人の姿に打ちのめされること、そして心の底から「助けて!」と何度も何度も繰り返し叫んでしまうことも、その全てが、私がこれまでに通ってきた道でした。
世の中で普通に暮らしている人たちの、何でもない姿がやけに目にとまり、腹黒い自分が出てきて「お洒落することもなく汚い恰好で適当に生きているなら私と替わって欲しい!」と何度思ったことかわかりません。
そんな様々な心の葛藤を抱えながら、私が行きついた結論は
『私には大切な家族と守るべきこうちゃんがいる』
ということでした。
たとえ自分のことが自分でできなくなっても、生きる意味があるかどうかは、自分の考え方一つだと思っています。
私が呼吸器を付けると選択した理由の一つに、「完治」という可能性を秘めた未来への希望があります。
このドラマによってALSの知名度が上がることで、その未来が少しでも近づいてくれたら嬉しいです。
~旦那後期~
夫婦で興味深く視ている「僕がいた時間」ですが、我が家ではNHKの連続テレビ小説「ごちそうさん」も家族で視ています。
大人気だった「あまちゃん」の後番組として始まったドラマですが、これがとても面白いのです!
「ごちそうさん」のタイトル通り、日常のさまざまな出来事にうまく料理を絡めた筋立てになっており、思いを込めて作ることの素晴らしさや、食べることの幸せが伝わってくる、とても素敵な物語になっています。
みなさんも機会があったらぜひご覧下さい。
ちなみにゆずが歌う主題歌はこうちゃんのお気に入りで、毎朝大きな声で歌いながら保育園まで通っています。